小説家の永井荷風も通った、カラマズー・カレッジの魅力を紹介!

はじめに

先日、ある方から私の母校であるカラマズー・カレッジについて、こんなご質問をいただきました:

あやさんがご卒業したカラマズーカレッジのオススメはどういった所でしょうか。
KPLANというユニークなプログラムがあるようですが、イマイチよくわかりません。
差し支えないようでしたら、大学での体験を少しシェアしていただけないでしょうか。

ということで今回は、私の母校・カラマズーカレッジの良かったところ・残念だったところなどを、赤裸々にお話します!

カラマズーってどこ?

Photo credit: https://www.kzoo.edu/

そもそも、「カラマズーってどこ?」と思う方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

そのおかしな名前から、「実在しない街」の比喩として「カラマズー」が使われることもあるようです。

カラマズーというのは、ミシガン州の西側にある、人口約7万8000人ほどの街の名前です。

冬のカラマズー・カレッジの様子

積雪量が多く、長い冬が特徴的です。自然が豊かで、野生の動物達もたくさん生息しています。

ちなみに、名前が似ていることから、静岡県沼津市の姉妹都市だそうです。

カラマズーカレッジとは?

Photo credit: https://www.collegevine.com/

カラマズーカレッジは、1833年に創立された私立のリベラルアーツカレッジです。

生徒数は4学年合わせて1300人程度と、大学にしてはかなり小さいです。クラスも少人数制で、12人から20人の生徒に対して一人の教授、プラス必要に応じて数名のアシスタントがついている、とても手厚い学習環境でした。

有名人だと小説家の永井荷風が在籍していたとのことです。数あるアメリカの都市の中からなぜわざわざカラマズーを選んだのかは不明ですが、ちょっと嬉しいです。ウォーキング・デッドに出演した韓国系アメリカ人の俳優、スティーブン・ユァンも、カラマズーカレッジが誇る卒業生の一人です。

私は高校時代もカラマズーで過ごしたのですが、カラマズーカレッジは変わり者の多い大学として有名でした(笑)実際、教授も生徒もユニークな人が多くて面白かったです。

大学時代のハウスメイトと。大学2年生の頃は、友達7人でシェアハウスに住みました。

カラマズーカレッジは、Kプランという独自のカリキュラムに沿って、「教科書からの勉強」だけでなく、実際に物事を体験させることによって生徒たちの学びを促進します。

4年生の頃は、ガーデニングのセミナーでサステナブルな自給自足について学びました。写真は、蜂蜜作りの様子です。
▲生物学の授業で作った、虫の標本。この授業を取った時は、常に虫取り網片手にキャンパス内をウロウロしてました

1年生、2年生、4年生はそれぞれ、さまざまなテーマのセミナーを受けます。生徒のほとんどが大学3年生の年に留学に行くため、3年生はセミナーを受講しなくてもOKです。

1年生はライティングとコミュニケーションスキルを向上させるもの、2年生は翌年の留学に備えて外国の文化などに触れることができるもの、最後の年は大学生活のまとめとして、それぞれのメジャーに関するものをテーマにしています。

ちなみに、私は…

  • 1年生の時は「サムライの歴史」についてのセミナーを取りました。日本語学校で歴史を習ったということもあり、「息抜き」のつもりで取ったクラスなのですが、エッセイや読書の課題量が半端無く、死にそうになったのを覚えています(笑)大学時代を振り返っても、おそらく一番キツいクラスだったのではと思います。
  • 2年生の時は、「ヨーロッパの街」というセミナーを取りました。一年生の頃とは打って変わって、ドイツ人の先生が教える、とても素敵でおしゃれなセミナーでした。
  • 4年生の頃は、卒論に終われて日々奮闘しながら、癒しを求めてガーデニングのセミナーを取りました。サステナブルな食品や、ガーデニングの仕方について学び、勉強に追われる生活の息抜きになったのを覚えています。

エクスターンシップというプログラムもあり、夏休みや冬休み(サンクスギビングから年明けまで、1ヶ月以上の長い冬休みです)を利用して、カラマズー大学の卒業生のお家に滞在させてもらい、お仕事をシャドーイングできます

私は心理学と生物学のダブルメジャーだったため、オハイオ州シンシナティにあるアルコール依存症の人々がカウンセリングを受ける施設にお邪魔させてもらいました。アルコール依存症の人々が日々奮闘する様子や、アルコール依存症のせいでホームレスになってしまった方々の体験談を聞きました。三日間という短いプログラムでしたが、内容がとてもヘビーで考えさせられるものでした。その時出会った人々とは今も繋がっており、三日間の体験も鮮明に覚えています。

大学最後の年には、Senior Individualized Project(SIP)と呼ばれる研究プロジェクトを行い、卒業論文を書きます。生物学の場合は、ほとんどの生徒は、カラマズー・カレッジの教授や他の大学や施設の教授の指導のもと、研究プロジェクトを行っていました。

▲環境学系のテーマで卒論を書いたため、毎日森へ行ってデータを集めました。大変だった!
▲卒論研究の際に撮った、鳥の雛の写真

▲近所の大学で行われた学会で、ポスタープレゼンを行った時の写真。常に睡眠不足と闘っていたため、怪しい笑みを浮かべています

私の場合は3年生と4年生の間の夏休みに別の大学で研究をさせてもらい、「人工的な建物がどのように野鳥のエコシステムに影響するか」というテーマで卒論を書きました。4年生の最後には、大学の学部生と教授達全員が集まるシンポジウムに参加し、みんなの前で卒論を発表します。教授達から辛辣なコメントや鋭い質問を受け、それに対応し、初めて卒業する資格をもらえるのです。

カラマズー・カレッジの良かったところ

選択するメジャーによっても経験は変わってくると思いますが、生物学と心理学メジャーだった私は、総合的にとても質の高い教育を受けることができたと思います。

▲毎日、朝から晩まで課題やテスト勉強、研究授業のレポート作成などに追われていました
  • 何より私の心を打ったのは、教授達の本気度です。どの教授たちも自分の教える分野に誇りを持って、本気でカリキュラムを組んでいるのがひしひしと伝わってきました。教授が本気なら、生半可な覚悟でクラスに挑むわけにはいきません。クラスの課題やプロジェクト、宿題の内容や採点に全力を注ぐ教授達に応えるためにも、生徒達は必死でした。生物学メジャーは、勉強量が多くて本当に大変でした。
  • クラスのサイズが小さいところも、とても良かったです。教授達のオフィスアワーに生徒達が殺到することも無いため、授業が難しく、理解できないところがあっても気軽に質問しに行くことができます。また、教授達は生徒一人一人をとてもよく見ているため、卒業後に書いてもらうレターオブレコメンデーション(推薦状)の内容がとてもクオリティの高いものになります
  • ど田舎なので、勉強に集中できるところ。これは、人によると思いますが、私の場合は誘惑があると遊びに行ってしまうため、ミシガン州の田舎にちょこんと位置するカラマズーカレッジのような大学は、自分に合っていました。娯楽がなさすぎて、勉強をしている時が楽しいと感じるほどでした(笑)
  • 日本人も少ないため、英語の学習目当てに留学を考える人にとってはいい環境です。私が在学中は、4学年合わせて5人の正規の日本人生徒がいました。うち3人はそれぞれ生物学、化学、物理学のトップだったため、理系の3人でそれぞれの苦手分野を助け合ったのを覚えています。日本人が少なかった分、絆も強かった気がします。とても懐かしい思い出です。

カラマズーカレッジの残念だったところ

私自身はカラマズーカレッジで受けた教育に、とても満足しています。

少人数制のクラスで、とても手厚い指導のもと4年間勉強させてもらいました。社会人になって就職したり、起業したりしてからも、4年間の経験が生かされていると感じることが多いです。

しかし、よくよく考えてみると、確かにもう少しこうだったら…と思う点はいくつかありました。例をあげると…

  • 田舎すぎて、車で30分ほど運転しないとスーパーに行くことができない。今考えると、当時どうやって自炊してたんだっけ?という感じです。車を持っている友達にスーパーに連れて行ってもらったり、バイト中に出会ったとても親切な方から差し入れでご飯をもらったりしていた記憶がうっすら残っています。現在はAmazonなどのサービスも充実していますが、私の学生時代は買い物に苦労したのを覚えています。
  • 小さい学校で大学院もないため、理系の生徒には研究の機会が限られていることも、デメリットになるかもしれません。ただ、研究の機会は少ないものの、夏休み中は他の大学の研究室にお邪魔したり、大学生を対象とした研究のプログラムに参加させてもらったりして、経験を積むことはできました。小規模ではありましたが、カラマズー・カレッジの教授達も、それぞれ研究のプロジェクトを行なっていました。なので、これは自分次第でどうにでも解決できる問題だと思います。
  • 大学3年生の春までキャンパス内の寮に住まなければいけない決まりがあったのも、当時私の中では大きな問題でした。というのも、「猫のいる生活」に強い憧れを抱いていたため、一刻も早く一人暮らしをして猫を飼いたかったのです。幸い、私の学年は生徒の人数が多く、希望者は2年生の終わりからキャンパス外のアパートに住むことが許されました。猫も無事に飼うことができました。
▲大学時代に飼い始めた愛猫、ジジ

まとめ

以上、私の母校であるカラマズーカレッジを紹介しました。こうして振り返ると、4年間とても過酷だったけれど、本当に充実した毎日だったなと思います。

「大学訪問(カレッジビジット)」のプログラムで、在学生と一緒に1日過ごし、大学のクラスにも参加できる制度もあるため、気になる人はぜひチェックしてみてください。